配管の圧力損失の計算方法とは?

Engineering CADが直管・ベンド・レジューサー・バルブなどの圧力損失をどの式で、どの順に計算しているかを、計算例を使って説明します。

計算結果を信頼して使うには、どの式・どの前提で求めた値かを知っている必要があります。手計算や他のソフトと比べるときにも、式と前提がそろっているかを確認できます。

20 °Cの水を毎時10 m³、内径50 mmの鋼管で100 m送ると、摩擦だけで約45 kPa(水の高さにして約4.6 m分)の圧力が失われます。同じ管で流量を2倍にすると、損失はおよそ4倍(実際は約3.7倍)になります。損失は流速の2乗にほぼ比例するからです。

圧力の変化を、性質の違う2種類に分けて計算します。
- 不可逆損失:摩擦や渦で失われる分(直管の摩擦、ベンド、レジューサー、バルブ、その他のK、分岐、反応器など)。要素ごとに0 Paへ切り替えられます。
- 静圧変化:失われずに位置エネルギーや運動エネルギーへ置き換わる分(高低差、流速の変化)。損失を0 Paにしても残ります。
p_{\mathrm{out}} = p_{\mathrm{in}} - (\text{摩擦} + \text{局所損失}) + \text{静圧変化}

例:上の水の配管(入口300 kPa、長さ100 m)が出口に向かって10 m上っている場合です。
- 摩擦損失:45.3 kPa(不可逆損失)
- 高低差:\rho g \Delta z = 998.4 \times 9.807 \times 10 = 97.9 kPa の低下(静圧変化)
- 出口圧力:300 - 45.3 - 97.9 = 156.8 kPa

摩擦損失を0 Paに切り替えても、出口は202.1 kPaで、高低差の97.9 kPaは残ります。水を持ち上げるのに使われた圧力は失われたのではなく、位置エネルギーに変わっただけだからです。

ブロックの結果と「系統の総括」には、摩擦・各局所損失・高低差・流速変化を別々に表示します。総圧力損失は「摩擦+局所損失」(この例では45.3 kPa)なので、入口と出口の圧力差(143.2 kPa)とは静圧変化の分だけ一致しません。

以下の例は、特に断らない限り同じ条件です:20 °Cの水(\rho = 998.4\ \mathrm{kg/m^3}、\mu = 1.002\ \mathrm{mPa\,s})、10 m³/h(\dot{m} = 2.773 kg/s)、内径 D = 50 mm、粗さ \varepsilon = 0.045 mm(市販鋼管の代表値)、入口300 kPa。数値はこのサイトの計算エンジンで計算した値で、説明のための入力例です(推奨値・規格値ではありません)。

## 直管:Darcy–Weisbach式
\Delta p_f = f\,\frac{L}{D}\,\frac{\rho u^2}{2}
f:Darcyの摩擦係数、L・D:長さと内径、\rho:密度、u = \dot{m}/(\rho A):断面平均流速(A = \pi D^2/4)。\rho u^2/2 を動圧と呼びます。

例:断面積 A = \pi \times 0.05^2/4 = 1.963 \times 10^{-3} m²、流速 u = 2.773/(998.4 \times 1.963 \times 10^{-3}) = 1.415 m/s、動圧 \rho u^2/2 = 999 Pa です。

### 摩擦係数
レイノルズ数は G = \dot{m}/A(管内で一定)を使って求めます。
Re = \frac{\rho u D}{\mu} = \frac{G D}{\mu}
- 層流(Re < 2300):Hagen–Poiseuille f = 64/Re
- 乱流(Re > 4000):Colebrook(1939)。f が両辺にあるので、Swamee–Jainの近似式を初期値にして相対差 10^{-13} まで反復します。
\frac{1}{\sqrt{f}} = -2\log_{10}\left(\frac{\varepsilon}{3.7D} + \frac{2.51}{Re\sqrt{f}}\right)
- 遷移域(2300 \le Re \le 4000):層流か乱流か予測できないため、64/2300 と Re = 4000 のColebrookの値の間を直線で補間し、結果に警告を付けます。

例(乱流):Re = 998.4 \times 1.415 \times 0.05 / 0.001002 = 70{,}500 なので乱流です。相対粗さ \varepsilon/D = 0.0009 でColebrook式を解くと f = 0.02269。長さ100 mでは
\Delta p_f = 0.02269 \times \frac{100}{0.05} \times 999 = 45{,}300\ \mathrm{Pa} = 45.3\ \mathrm{kPa}

例(層流):粘い油(\rho = 850 kg/m³、\mu = 0.05 Pa·s)を0.5 kg/s、内径50 mm・長さ20 mで流すと、u = 0.300 m/s、Re = 255 で層流です。f = 64/255 = 0.251、\Delta p_f = 0.251 \times 400 \times 38.1 = 3.83 kPa。層流では f が粗さによらず、損失は流量に比例します(乱流ではほぼ2乗に比例)。

### 区間に分けて解く
温度と圧力で密度・粘度が変わるため、配管を n_segments 個(既定50)の区間に分け、入口から順に次の式を同時に満たす状態を反復計算で求めます(添字 m は区間の平均)。
p_2 = p_1 - f\,\frac{\Delta x}{D}\,\frac{\rho_m u_m^2}{2} - \rho_m g\,\Delta z - G\,(u_2 - u_1)
h_2 + \frac{u_2^2}{2} + g z_2 = h_1 + \frac{u_1^2}{2} + g z_1 + \frac{\delta Q}{\dot{m}}
右辺の3つの項は順に、摩擦損失・高低差・加速(気体の膨張で流速が上がる分)です。状態(温度・密度)は (h_2, p_2) から、気体はCanteraの理想気体、液体は水の物性式または入力した一定物性で求めます。粘度も区間ごとに更新するので、Re と f も場所によって変わります。g = 9.80665\ \mathrm{m/s^2}。

周囲との熱の出入り \delta Q は区間ごとの厳密な指数形で計算し、温度変化による密度・粘度の変化が圧力損失に反映されます(配管の熱損失)。
\delta Q = -\dot{m} c_p (T_1 - T_\infty)\left(1 - e^{-UA/(\dot{m} c_p)}\right)

### 気体の密度の扱い
- auto(既定):圧力変化が入口圧の10 %以下かつマッハ数0.3以下なら入口の密度のまま計算し、超えたら圧縮性の計算に切り替えて注記します。
- compressible:常に区間ごとに密度を更新します。
- constant_density:上の範囲を外れたら計算しません。

どの場合もマッハ数0.9以上は閉塞流に近いため計算しません。

例:20 °C・200 kPaの空気(\rho = 2.37 kg/m³)を0.1 kg/s、内径50 mmで流します(u = 21.5 m/s、Re = 139{,}000、f = 0.0212、マッハ数0.06)。
- 長さ20 m:密度一定で \Delta p_f = 4.64 kPa。入口圧の2.3 %なので、密度一定のまま計算します。
- 長さ100 m:密度一定なら約23.2 kPa(11.6 %)で10 %を超えるため、圧縮性の計算に切り替わります。圧力が下がると空気が膨らんで流速が21.5 → 24.6 m/sに上がり、摩擦損失は24.8 kPa(密度一定より約7 %大きい)、出口は175.1 kPaになります。加速に使われた0.16 kPaは静圧変化として別に表示します。

## 局所損失:K値
\Delta p = K\,\frac{\rho u^2}{2}
u は管内の流速です。前後で h + u^2/2 を保存し、気体の膨張による加速分は静圧変化として別に数えます(損失係数)。K = 1 の要素は、動圧1つ分(水の例では999 Pa)の圧力を奪います。

### ベンド
K値を直接入力するか、Crane TP-410の90°ベンドの式 K = n\,f_T で求めます。n は曲げ半径比 r/D の表(1→20、1.5→14、2〜3→12、4→14、6→17、8→24、10→30、12→34、14→38、16→42、20→50)を直線補間した値、f_T は完全粗面の摩擦係数(Colebrook式で Re \to \infty)です。
f_T = \left[-2\log_{10}\left(\frac{\varepsilon}{3.7D}\right)\right]^{-2}
ベンドが N 個なら損失は N K \rho u^2/2 です。45°ベンドの相関式は登録していないので、K値は入力だけです。

例:r/D = 1.5 のロングエルボを4個。f_T = [-2\log_{10}(0.0009/3.7)]^{-2} = 0.0191、K = 14 \times 0.0191 = 0.268(1個あたり)、合計 4 \times 0.268 = 1.07。損失は 1.07 \times 999 = 1.07 kPa。直管に換算すると L = K D / f = 1.07 \times 0.05 / 0.02269 \approx 2.4 m分です。

### レジューサー・エキスパンダー
基準流速は細い側の流速です。\beta = 細い径/太い径、\theta = 全開き角として(Crane TP-410):
- 縮小、\theta \le 45°:K = 0.8\sin(\theta/2)(1-\beta^2)
- 縮小、\theta > 45°:K = 0.5(1-\beta^2)\sqrt{\sin(\theta/2)}
- 拡大、\theta \le 45°:K = 2.6\sin(\theta/2)(1-\beta^2)^2
- 拡大、\theta > 45°:K = (1-\beta^2)^2

径の変化による流速変化の分 \rho(u_1^2 - u_2^2)/2 は、損失とは別の静圧変化です。

例:内径50 mmから100 mmへの急拡大(\theta = 180°、\beta = 0.5)は K = (1 - 0.25)^2 = 0.5625。基準は細い側の流速(1.415 m/s)なので損失は 0.5625 \times 999 = 0.56 kPa です。一方、太い管では流速が1/4(0.354 m/s)に下がるので、静圧は 998.4 \times (1.415^2 - 0.354^2)/2 = 0.94 kPa 上がります。差し引きで、出口の圧力は入口より0.37 kPa高くなります(300.0 → 300.4 kPa)。損失があっても圧力が上がるのは、減速して運動エネルギーが圧力に戻るからです。

### バルブ
K値、Kv、Cvのどれかで指定します。Kvは差圧1 barで流れる水の流量(m³/h、VDI/VDE 2173の定義)です。
\Delta p\,[\mathrm{bar}] = \left(\frac{Q\,[\mathrm{m^3/h}]}{K_v}\right)^2 \frac{\rho}{1000\,\mathrm{kg/m^3}}
K_v = C_v \times \frac{0.2271247}{\sqrt{0.0689476}} \approx 0.865\,C_v
気体では膨張係数を考慮しないため、差圧が圧力の10 %を超える場合は計算しません。開度を指定した場合は、IEC 60534の固有流量特性(リニア/イコールパーセント)でKvを求めます。

例:Kv = 40 のバルブに10 m³/hの水を流すと、\Delta p = (10/40)^2 \times 0.998 = 0.0624 bar = 6.24 kPa。Cvで表すと C_v = 40/0.865 \approx 46 です。

## その他の要素
- 分岐(スプリッター):出口ごとに \Delta p = K\rho u^2/2(u は各出口の流速)。分岐・合流の流量比に依存する相関式は登録していないので、Kは利用者が入力します。
- 反応器・ヒーター・ミキサー:zero(0 Pa)/fixed(指定値)/k_factor(\Delta p = K\rho_{\mathrm{ref}} u_{\mathrm{ref}}^2/2、u_{\mathrm{ref}} = \dot{m}/(\rho_{\mathrm{ref}} A_{\mathrm{ref}}))。出口でエンタルピー一定として加えます。例:上の空気(2.37 kg/m³、0.1 kg/s)で K = 2、A_{\mathrm{ref}} = 1.963 \times 10^{-3} m² なら、u_{\mathrm{ref}} = 21.5 m/s、\Delta p = 2 \times 2.37 \times 21.5^2/2 = 1.10 kPa。
- 分岐流量の連立計算:分岐の割合 x について、両方の枝の末端の圧力余裕が等しくなる点を、各枝のブロックを実際に計算しながらIllinois法(はさみうち法の改良)で求めます(分岐流量の配分)。短い枝ほど流れやすいので、多くの流量がそちらへ配分されます。

## 計算例:つなげた系統
水の例の配管を、直管100 m(10 m上り)→ 90°ベンド4個(r/D = 1.5)→ バルブ(Kv = 40)とつなぐと、各ブロックの出口圧力は次のようになります。
1. 直管:300.0 → 156.8 kPa(摩擦 45.3 kPa、高低差 97.9 kPa)
2. ベンド:156.8 → 155.7 kPa(1.07 kPa)
3. バルブ:155.7 → 149.4 kPa(6.24 kPa)

不可逆損失の合計は 45.3 + 1.07 + 6.24 = 52.7 kPa、静圧変化は −97.9 kPa、入口と出口の圧力差は150.6 kPaです。この系統で一番効いているのは高低差で、その次が直管の摩擦です。損失を減らしたければ、管を太くするのが最も効果的です(同じ流量なら、損失は内径のおよそ5乗に反比例します)。

Crane TP-410の係数(90°ベンドの n の表、レジューサーの式)は、原典との照合が済むまで「要確認」として扱っています。精度が必要な場合はK値を直接入力してください。単相流だけを扱い、音速に近い流れ・逆流・二相流は計算しません。計算例の数値は説明用の入力で、推奨値・規格値ではありません。